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第43回 地域密着! トップインタビュー/極東ファディ株式会社 代表取締役社長 秋本 修治 様 

 自社焙煎のコーヒーと冷凍食品でおなじみの「ファディ」を運営する極東ファディ株式会社。まもなく創業70年を迎える老舗の企業でありながら、コーヒー焙煎・業務用食品の卸売りから小売店・カフェの展開、オリジナル商品の開発販売とチャレンジを続けておられます。秋本修治社長にお話を伺いました。

商品を売って終わりじゃない。むしろ、
お客さまのストーリーはそこから始まります。

■ファディさんといえばショップやカフェを思い浮かべる方も多いと思いますが創業時は小売業ではなかったとか。御社の歴史からお聞かせいただけますか?

秋本氏:弊社は昭和28年に小倉市大門で私の父・正男が創業しました。商社勤めをやめて事業を起こし、海外製品の卸しをしているとき「コーヒーが流行る」と聞いてコーヒー焙煎を始めたそうです。でも、当時すでに小倉にはワールドコーヒーさん、ブラジル珈琲さんがあって。コーヒーだけではホテルやレストランなど大口の契約を取るのが難しく、食品の卸業にも注力するようになりました。コーヒーも食品も顧客は飲食店や惣菜店、いわゆる業務用専門だったのですが、私には弊社入社前から「小売りをしたい」という想いがありました。

■その時代に業務用食品を一般の方に販売するお店は今ほどなかったように思います。何かきっかけがあったのですか?

秋本氏:大学卒業後、私は大手食品メーカーに入社して業務用食品を直販する店舗を担当していました。担当する店舗のお客さまのほとんどが飲食店の方々でしたが、あるとき3人組の主婦の方がいらっしゃったんです。接客のかたわら試食用に冷凍コロッケを揚げていたんですが、仕入れに来る方は忙しくて試食なんてしてくれないんですね。せっかく揚げたから…と主婦の方々に試食を勧めたら喜んで食べてくださって、「すごくおいしい!」と。さらに「家族にも食べさせたい」と1袋に30個も入った冷凍コロッケを「3人で分けるから売ってください」と快く買ってくださったんです。
 何が嬉しかったって「こんなにおいしいものを紹介してくれてありがとう」と喜んでくださったのが本当に嬉しくて。それまで仕入れに来た方に感謝されたことがほとんどなかったので、「同じコロッケを同じ値段で売ってこうも違うのか。喜ばれる仕事をしたい」と強く思いました。そして北九州に帰って弊社に入り、平成3年に念願の小売り第1号店をオープンしました。

■小売店の展開は秋本社長がご考案されたのですね。同年に社名も変更されていますが由来を教えていただけますか?

秋本氏:創業時の社名は「極東商会」でした。「極東」はコーヒーの持つグローバルな広がりを意味していますが、小売店の展開にあたってお客さまに親しんでいただけるような名前にしたいと、いい日・いい出会い・いい食事の想いを込めて「ファインデイ・ファインディナー」を文字って「ファディ」と名付けました。

■ファディさんはラインナップの豊富さに加えて、開発商品のおいしさも評判ですよね。私も友人たちから「あれがいい、これがいい」と本当によく勧められます。

秋本氏:有難いことです。「冷凍食品は不味い」というイメージをお持ちの方もまだ少なくありません。たしかにそういうものもある。でも、業務用の冷凍食品はそもそも惣菜店や飲食店が調理して商品として売るためのものですから、不味いものでは通用しない。品質にこだわるメーカーが多いんです。弊社も主婦の方々に「おいしい」と喜んでもらった経験が出発点ですから、本当においしいものだけを届けたいという想いで商品開発に取り組んでいます。

■御社の自社焙煎コーヒーのファンもたくさんいらっしゃいます。コーヒーのこだわりについてもお聞かせ願えますか?

秋本氏:私は昔、コーヒーが嫌いだったんです。うんちくを語られてもピンと来ないし、ブルーマウンテンはあれだけ高価なのに飲んでもおいしいと思わなかった。そんなことを繰り返しているうちに「コーヒーってよく分からん…」と苦手になってしまって。昔の私のように、コーヒーをおいしく感じないとしたら豆の鮮度に原因があることが多いと思います。「酸味のないコーヒーがいい」という声をよく聞きますが、その場合の酸味とはコーヒー本来の良い酸味ではなくて、豆が酸化してえぐみになった酸だと思います。喉に引っかかってスッと飲めないんですね。ですから弊社が第一に大切にしているのは鮮度。焙煎して2週間以内の豆だけを提供し続けています。
 コーヒーがお好きなら、豆は挽きたてがやはりおいしい。自分でドリップすると豆の鮮度も簡単に見分けられるんですよ。ペーパーフィルターに豆を入れて、まずは全体にお湯を注ぎます。20~30秒待ってから、もう一度お湯を注ぐ。ここで豆がふわっとドーム状にふくらんだら鮮度が良いしるしです。私たちはこのふくらみを「アロマドーム」と名付けました。

■アロマドーム、素敵な表現ですね。ファディさんはリピーターのお客さまが多いことも素晴らしいと感じます。

秋本氏:ファディには一般的なスーパーで取り扱っていない商品もたくさんありますが、珍しさで1回買えば満足という商品は私たちが届けたいものとは違うと考えています。また食べたい、また飲みたいと思っていただける商品をいかにお届けできるか。販売店にとって売上は成績ですし、私も商品がレジを通るピッピッという音が大好きです(笑)。でも「売って終わり」ではないんですね。むしろ、お客さまと商品のストーリーはそこから始まるわけです。
 例えば、弊社のカレー用調理ソースはしっかり煮詰めて作っていますが、具材は入れていません。家で作るときに玉ネギや牛肉を炒めるひと手間を残しているんです。誰だって食事はいちから手作りした方がいいことは分かっている、でもできない。そんな時にレンジで温めるだけではなくて、野菜や肉を炒める5分の手間をかけることで気持ちや愛情が込められる。作ってもらったお子さまも「カレーおいしいね!」と喜ぶ。そんな食卓の会話をどれだけ想像できるかが大切だと考えています。

■社長ご自身が特に気に入っているオリジナル商品を伺えますか?

秋本氏:最近、家で繰り返し食べているのは「昆布塩サバフィーレ」です。脂がのったノルウェー産のサバを昆布エキスで仕込んだ冷凍の塩サバなんですが、すごくおいしいんですよ。昆布エキスは青魚の臭みを抑えながら、保水効果もあり、ジューシーな焼き上がりで魚の旨味が楽しめます。冷凍食品も素材と製法がおいしさの要。定番のから揚げは鶏の鮮度にこだわり、餃子は一般的な冷凍食品と違って皮もタネも生なんです。ぜひお試しいただきたいです。
 品質を追求すると価格はどうしても少し高くなってしまいます。ファディのお客さまはシニア世代の方々がとても多いのですが、お話を伺ってみると「冷凍庫にファディの商品を入れておくと娘が孫を連れて取りに来る」と。シニア世代の方々がそんな方法で子育てを応援されていたんです。人と人のいろんな関わり、つながりの中にファディの商品が介在していることをうれしく思った瞬間でした。

■秋本社長から見た北九州市の魅力や、期待することをお聞かせください。

秋本氏:物心が付いた頃には小倉祇園太鼓に出ていましたし、北九州が大好きです。ただ、街を愛している分、正直なところ残念に感じる部分もあります。大企業だけでなく、中小企業や市民を含めて地元をもっと巻き込んでいけば良い街になるのに…と。北九州の飾らない気質ってすごく良いと思うんです。堅実で実直、自然体。「見栄を張るのは恥ずかしいこと」という気質は北九州のDNAではないでしょうか。そういう北九州の気質、感性に時代がマッチしてくると面白いだろうなと思っています。

■最後に好きな言葉を教えてください。

秋本氏:心に決めているのは「楽しいことをやろう」。ムリをすると続かないので、楽しいと思うことを頑張り続けたい。ユニクロの柳井正氏の著書に『一勝九敗』というタイトルがありますが、私も本当にそう思います。たくさん失敗もしてきましたが、挑戦しなければ成功もありません。これからも商品を通じてたくさんの方々のライフシーンに入り、お客さまの暮らしをより豊かにするお手伝いができれば本望です。

■秋本社長さま、本日は貴重なお話をありがとうございました!

【編集後記】

●おいしいコーヒーと業務用食品でおなじみの「ファディ」を運営されている極東ファディ株式会社さま。お買い物をしたり、カフェでコーヒーを楽しまれたことがある方も多いのではないでしょうか。今回はそのショップとカフェの展開を考案された秋本修治社長にお話を伺いました。今も社長自らコーヒーのカッピングをされるそうで、新型コロナの流行前は、海外農園への買い付けもご自身で出向かれていたそうです。

●良質のコーヒー豆が育つのは寒暖差が大きくて霜が降りない場所。赤道付近の標高1000m以上の高地が理想的ですが、近年の気候変動によって豆の産地も変わり始めており、良質の豆を安定して仕入れるには確かな情報を得られる長年の信頼関係が不可欠なのだとか。取材時、大きなカップいっぱいに注いでいただいたコーヒーは本当においしかったです。

●取材は小倉駅近くの本社に伺いました。取材前、1階のカフェでパスタをオーダーするとお皿の隣に1枚のカードが。そこに注文したパスタの食材が全て書かれていて大変驚きました。「ファディで購入できる食材でメニューを考えるので、例えばパスタなら、麺はこれ、具材の鶏肉はこれ、野菜はこれ、ソースはこれを使っていますと全て種明かししているんです。食べてもらえれば冷凍食品がおいしいことを分かっていただけますから」と秋本社長。実際にとてもおいしくて取材後、両手いっぱいに買物をして帰りました。

●コーヒーは奥深くてむずかしいイメージがありましたが、「昔はコーヒーのおいしさがよく分からなかった」「淹れ方にこだわって熱湯はよくないという人もいますが、私は気にしません。熱湯で淹れますよ(笑)」と終始気さくにお話しくださった秋本社長。お忙しい中、貴重なお時間をいただきまして本当にありがとうございました!

取材日:令和3年11月12日(金)

【極東ファディホームページ(外部リンク)】