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第41回 地域密着! トップインタビュー/日本製鉄株式会社 薄板事業部 ブリキ営業部長 三好忠滿様〈後編〉

 官営八幡製鐵所のものづくりDNAを受け継ぐ「日本製鉄九州製鉄所 八幡地区」。後編の今回は八幡製鉄所からの組織再編をはじめ、さらなる競争力強化への取り組み、生産工程の再構築化、また社内ラグビー部の話題なども登場します。前号に続き、三好忠滿 部長にお話を伺いました。

【日本製鉄株式会社 薄板事業部 ブリキ営業部長 三好忠滿様】

生産工程の再構築を図り、競争力を強化。
「九州製鉄所 八幡地区」の新たな挑戦。

■前回のお話で「八幡地区は製造する製品の幅広さが特徴」と伺いました。製品の競争力を強化するうえで、どのような取り組みを行っているのでしょうか?

三好部長:八幡地区は自動車部品をはじめ、省エネ家電、建材・土木、鉄道用レールなど多様な製品に使われる高機能な鉄を生産しています。優れた製品を開発する技術力と並んで求められるのが、需要に応える生産力です。例えば、エアコンや冷蔵庫などの省エネ家電、電気自動車などは世界的に需要が伸び続けており、その部品となる高機能材料「電磁鋼板」の生産力拡大は急務です。八幡地区では2~3年後を目途に、電磁鋼板の生産力拡大に向け動き始めています。こうした製品群を活かすためにも、その基盤となる戸畑・小倉・八幡の3拠点の製造工程の最適化に取り組んでいます。

■「製造工程の最適化」とはどのようなものですか?

三好部長:鉄製品を製造する工程は、前半と後半で大きく2つに分かれており、前半を「上(かみ)工程」、後半を「下(しも)工程」と呼んでいます。上工程は鉄鉱石や石炭を溶かし、連続鋳造機で板状に固めるまでの工程です。
 少し詳しく解説すると、まず原料である鉄鉱石とコークス(石炭)を製鉄所のシンボル・高炉の中に、鉄鉱石→コークス→鉄鉱石→コークスと層状に重ねて積み上げます。それを下から1200度の熱風で噴き上げることによって、鉄鉱石(酸化鉄/FeO)とコークス(炭素/C)が反応して、一酸化炭素(CO)ガスと鉄(Fe)が生まれます。COガスは前回お話ししたように100%回収し、所内のエネルギー源としてリサイクルします。一方、高熱によって液状に溶けた鉄は、成分を
調整し、連続鋳造機で板状に固めていきます。ここまでの工程が上工程です。

■元素記号に化学式、懐かしいです。真っ赤に溶けた鉄を固めるまでが上工程、それ以降の製品化が下工程というわけですね。

三好部長:そうです。ちなみに真っ赤に溶けた鉄のことを所内では通称「お湯」と呼んでいます。いったん火を入れた高炉は基本的に止めません。「お湯」が出ている以上、工場は24時間稼働。所員は4組3交代制で現場をまわし続けます。
 現在、八幡地区(戸畑・小倉・八幡)では上工程の最適化に取り組んでいます。小倉は、もともと住友金属工業の小倉製鉄所だったので、コンパクトな敷地の中に上工程から下工程を備える鉄鋼一貫型の製造拠点です。特に、自動車のエンジン、足回りに使われる重要部品の素材となる棒鋼、綿材製品を製造し、高い技術力を誇っています。
 現在、3拠点での生産最適化を進めています。具体的には、規模の大きな高炉を有する戸畑へ上工程を集約して競争力を向上させようとしています。昨年、戸畑に世界最新鋭、最大級の連続鋳造機(溶けた鋼を固めて半製品にする設備)を導入しました。今後、戸畑で作った半製品を戸畑・小倉・八幡へ供給していきます。今年9月末を目途に、新しい生産体制へ完全移行します。より高い品質対応力、生産能力をフルに活かし、八幡地区が誇る豊富な製品群を世界中のお客さまへお届けします。

■先ほど溶けた鉄を「お湯」と呼ぶというお話がありましたが、御社ならではのごあいさつもよく知られていますね。

三好部長:「ご安全に」ですね(笑)。現場だけでなく、弊社では社内のあいさつは常に「ご安全に」です。もともとドイツの鉱山で働く方々が「今日も皆が安全に1日を過ごせるように」と交わしていたあいさつを取り入れたと聞いています。今では社長をはじめ構内で働く全員が、朝のあいさつも、すれ違うときも「ご安全に」。顔を合わせないメールや電話も「ご安全に」。ごく自然な習慣としてこのあいさつを交わし合っています。

■三好部長はラグビー部の部長としてもご活躍です。チームの活動を聞かせてください。

三好部長:日本製鉄八幡ラグビー部は1927年に創部し、93年目のシーズンを迎えました。かつて、全国社会人大会では12回の優勝を誇り、4連覇達成など歴史的な記録も数々残しています。
 現在、部員は約50名。今は同好会という位置付けですから部員は日中は仕事をし、練習は平日の夜週3回と土曜、試合は日曜に行っています。チームはトップキュウシュウリーグのAリーグに属しています。トップキュウシュウリーグは、サッカーでいうところのJ3。その中でAリーグとBリーグの2ランクに分かれており、シーズン終了時にAリーグで下位2チームになるとBリーグへの入れ替え戦に出なくてはなりません。
 実は去年、一昨年と2年連続でこの入れ替え戦に出ることになりまして…。しかも、Bリーグから勝ち上がってきた相手は、一昨年が安川電機さん、去年は弊社の日本製鉄大分。絶対に負けられないとハラハラしましたが、しぶとく持ちこたえました(笑)。
 試合は鞘ヶ谷陸上競技場などで行っています。ぜひ多くの皆さんに観戦いただき、勇気と感動と元気を与えられるチームになっていきたいと思っています。

■2018年に北九州に着任されたそうですが、街の印象はいかがですか?

三好部長:まずは何より「ものづくりのまち」の印象です。私は転勤族で全国各地をまわってきましたが、これほどものづくりの技術や人材が積層している都市をほかに知りません。大企業と中小の地場企業が信頼関係のもとで産業の裾野を広げてきた歴史があり、今もその根をたくましく張っている。日本は近い将来、人手不足がますます深刻になり、AIをはじめIT技術を駆使しながらものづくりを変革させていくことが重要ですが、北九州には集積をうまく活かした展開に可能性があると感じますし、弊社もその核の一つになっていきたいと考えます。
 仕事以外の印象で言えば、住みやすさですね。魚介類を筆頭に食べものが安くて本当においしい。そして人が大らか。よそ者を受け入れてくれる度量の広さのおかげで北九州が大好きになりました。

■最後に三好部長が大切にしている言葉を教えてください。

三好部長:若い頃からのモットーは「明るく、楽しく、前向きに」。何事も自分の心の持ちようしだいかなと思うので、気が滅入りそうなときほど、明るく楽しく前向きな姿勢で臨むよう心がけています。
 製鉄所という巨大なものづくり工場の良いところは、多くの人が働けること、そして多くのお客さまと関係できることだと私は考えています。これだけ大規模な工場を、地域のご理解なくして稼働し続けることはとてもできません。そういう意味で大切にしている姿勢が「正々堂々」です。地域の中で皆さんと一緒にやっていくのだから、常に正々堂々、ありのままでなければ関係が長続きしないと思います。
 私たちは八幡製鉄所から九州製鉄所 八幡地区に組織再編し、また新たなスタートを切りました。九州製鉄所として、ものづくりの力をいっそう高めながら、この地で引き続き地域の方々に信頼され、お役に立てるよう今後も正々堂々、邁進してまいります。

●取材時、八幡地区の総務部長でいらっしゃった三好部長様。2年間の北九州勤務を経て、この春より本社薄板事業部 ブリキ営業部長へご就任されました。ますますのご活躍をお祈りしております。お忙しい中、取材のご対応をいただきましてありがとうございました!

 

【編集後記】

●拠点の再編成に伴って、「八幡製鉄所」から「九州製鉄所」に改称された日本製鉄 九州製鉄所 八幡地区様。戸畑・八幡・小倉を合わせた八幡地区の総敷地面積は福岡PayPayドーム158個分。あまりに規模が大きく、取材前は遠い世界のように感じていましたが、生産される鉄が家電や缶ジュースなど身の回りのものにも使われていると伺い存在がぐっと身近に感じられました。

●なかでも八幡地区が得意とする鉄道用レール、その輸送法には驚かされました。鉄製のレールがカーブに沿って曲がったり、また直線に戻ったり、やわらかに形を変えていく様子は全国各地の鉄道ファンの方々がインターネット上にアップしてくださっています。ぜひ「ロングレール輸送」で画像や動画を検索してみてください。新幹線の車両およそ7両分にも及ぶ長いレールがしなやかに弧を描きながら運ばれていく様子は一見の価値ありです。

●日本製鉄八幡ラグビー部は昨年から新しい監督やコーチが加わり、戦術も一新されたとか。「試合内容が格段に上がってきた手応えを感じています」と三好部長。ユニフォームはオレンジ×濃紺のボーダー柄デザインで「高炉から流れ出る鉄」のイメージそのものです。

●取材時、九州製鐵所八幡地区の総務部長でいらっしゃった三好部長様。2018年に着任され濱村社長とは北九州単身赴任者の会などで親睦を深めておられました。2年間の北九州勤務を経て、この春より本社薄板事業部 ブリキ営業部長へご就任されました。ますますのご活躍をお祈りしております。お忙しい中、お時間をいただきましてありがとうございました!

 

取材日:令和2年2月18日(火)