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第42回 地域密着! トップインタビュー/株式会社ATOMica(アトミカ) 代表取締役COO 嶋田 瑞生様

 JR小倉駅前に誕生したコワーキングスペース「ATOMica北九州」。デスクワークや勉強、会議など様々なシーンに活用できる場所ですが、ユニークなのは個々の作業をしながらも利用者同士が〈ゆるい繋がり〉を持てること。従来のレンタルスペースとは何が違うのでしょう。嶋田瑞生COOにお話を伺いました。

働く世代から小学生・受験生、高齢者まで
あらゆる個が交差する「プチ北九州」へ。

■御社は今年2月に小倉駅前セントシティにコワーキングスペース「ATOMica(アトミカ)北九州」をオープンされました。まずは「コワーキングスペース」とは何かを教えていただけますか?

嶋田氏:簡単にいうと「誰でも来たいときに来て、自分の作業ができる場所」です。店舗内には100人分の座席があり、高速インターネットに接続して仕事をしたり、勉強をしてもいい。会議や商談に使える個室もありますし、プロジェクターを使って100人規模のイベントを行うこともできます。ただ、レンタルスペースと混同されがちですが、場所や設備を提供するだけではないのがコワーキングスペースの大きな特長です。「コワーキング」という言葉は、協力や協同を意味するコオペレーション(cooperation)に由来します。それぞれ自分の仕事や作業をしながらも、同じ空間を利用することで関係性が生まれる。普段は軽くあいさつをする程度でも、必要なときに必要な人同士がコミュニケーションを取って、仕事やものごとを一緒にやれる「ゆるい繋がりを持てる場所」、それがコワーキングスペースの面白さです。

■弊社も先日、会議室を使わせていただきましたが、お一人で来ている利用者さん同士が気軽に情報交換されている様子を拝見しました。人と情報がこういう場所で有機的に繋がっていくのは面白いですね。

嶋田氏:例えば地域では、困ったことが起こると顔役の方に「こういう問題があるんだけど何とかならないですか?」と相談を持ちかけますよね。すると「こういう人がいるよ」「こういうのはどう?」と、人と人が繋がって話が前に進んだり問題が解決していく。ビジネスも基本的には同じだと思うんです。周りに相談したり頼れる相手がいればいいですが、初めて事業を立ち上げる人や、ほかの地域から来てビジネスを始める場合などは頼れる仲間がいない。そういうとき僕らが顔役のような存在になって、持ち込まれた相談ごとをいろんな人に繋げながら解決のお手伝いをします。アトミカという社名にもその想いを込めました。大文字の「ATOM」は原子で、それを「ica」していく。世の中にある人・もの・コト・情報などの様々なきっかけ=原子(ATOM)を、見つけて育て(insight/incubation)、繋いだり協力しながら(connect/collaboration)、達成していく(achieve)その一連の化学反応の背中を押す。アトミカに相談すると上手くいくんだよね、という存在になっていきたいです。

■アトミカ1号店は2019年に宮崎市にオープンされました。続く2号店の拠点に北九州市を選んだのはなぜですか?

嶋田氏:弊社独自の出店ロジックで全国の都市を見ていったとき、北九州は常に拠点候補のトップ5に入っていました。人口や産業の規模といったポテンシャルに加えて、北九州のいちばんの魅力は街のパワーだと僕は思っています。八幡製鉄所があって、かつてはアジアで最も栄え、この街を中心に世界が動いていた時期がある。そんな都市は世界でもごく稀です。そこから鉄鋼業の衰退、公害問題を市民一丸で乗り越え、今ではアジア地域で初のSDGs推進に向けた世界のモデル都市に選ばれています。地元の方には当たり前に映っているかも知れませんが、僕は仙台出身で北九州という街の歩みがとても衝撃的で。これはすごいぞ、と大変感銘を受けました。
 それから、福岡市との関係性もすごくいいと思っています。ある種のロールモデルにもできるし、反面教師にもできる。しかも、かつてはそのライバルを凌いでいた時代があって「あのときの北九州を!」という気概がありますよね。立地的にもすぐ隣にあって意識しやすい分、発展の余地が大きいと思うし、実際に発展しているとも思う。もうすっかり好きな街になっています。

■嬉しいです(笑)。私は社長に就任した時、銀行の方が仰った「北九州は地元想いで人財を大切にしながら、事業を永くやっていこうという気概のある企業が多い」という話をよく覚えています。実際いろんな方々にお会いしてみると、やっぱり素晴らしい企業、産業が多くて、一般市民も含めて人の熱量が非常に高いと感じます。行政のフットワークまで商社マンのように軽くて。

嶋田氏:僕も市役所の方と初めてお会いしたとき度肝を抜かされました。打てば響くテンポ感というか、その日、東京に戻ってすぐ「北九州市役所すごいんだけど!」って仲間に興奮しながら話しました(笑)。

■地域の話でいえば、地場企業と学生をコラボレートする「ATOMach(アトマッチ)」事業も面白そうです。詳しく教えていただけますか?

嶋田氏:アトマッチは地場の企業さんから寄せられた相談ごとを学生と一緒に解決しよう、というプロジェクトです。例えば、自社で野菜を栽培していて味は抜群なのに売上が伸びない、という課題があるとします。まず僕らが「野菜を使ってオリジナルのお総菜を開発したらどうか」「ネット販売で新しい販路が開拓できるかも」「資金はクラウドファンディングで集めよう」など、解決のための基本アイデアを練り、企業さんがやってみたいとなったら実践に学生を巻き込むんです。企業と学生をただマッチングするのではなく、両者の間に共通の課題があることで「これはどう?」「あれは?」と会話やコミュニケーションが活性化します。新しいインターンシップ・コミュニティのようなものですね。企業にとっては課題解決の道筋が見え、社内に学生という新風が吹き込むことが刺激にもなる。また学生との共同プログラムは話題性があるのでメディアに注目されやすいというメリットもあります。宮崎ではすでに10社以上の実績があり、学生も募集をかけると即定員になる盛況ぶりです。
 アトミカとは別の事業ですが、まだ東北にいた大学時代に僕は初めて起業しました。学生時代にビジネスの世界に触れたことで、たくさんの働く大人に出会い、話を聞き、得られた刺激や学びは本当に大きいものでした。かつての自分と同じローカルにいる学生たちに「!」という刺激の場をあげたいと思い、それがアトマッチを始めたきっかけの一つです。今、いよいよ北九州でもアトマッチをやろうと動き始めていて、これからの展開が楽しみです。

■最後に嶋田さんご自身について伺わせてください。好きな言葉はありますか?

嶋田氏:座右の銘とは少し違いますが、近しい間柄の2人からもらった言葉があります。「嶋田くんは答えがあることは上手。だけど、ビジネスで本気で遊ぼうとしてる?本気で楽しみきって遊べてる?」と。要は「おりこうさん」なんですね。だから自分に対して「脱線を怖がっていないか?」と問いをかけています。自分が楽しむことが世の中を明るくするんだ、ぐらいの気持ちで「本気で仕事を遊ぶこと」が僕のテーマの1つだと思っています。

■休日はどんなふうに過ごしますか?

嶋田氏:仕事で人にたくさん会う分、休みの日は妻とゆったり過ごすことが多いです…好感度が上がりそうな答えですが(笑)。2人とも料理をしたりお酒も好きなので、一緒に買物に行ってちょっと手の込んだ料理を作りながら飲みながら…のような。先週はイワシがすごく安かったので10匹を一気にさばいて、なめろうにしたり、梅しそで巻いて片栗粉をつけて揚げてみたり、イワシまつりをやりました(笑)。

■いいですね(笑)。「アトミカ北九州」さんのこれからを楽しみにしています。

嶋田氏:おかげさまで少しずつ認知していただき利用者の層も広がっています。働く世代はもちろん、親御さんと一緒に小学生が来たり学生が受験勉強していたり、社会人同士が英語サークルを開いたり、60代70代の方もいらっしゃいます。先日は「テレビで知ったんだけど、私はどういう使い方ができますか?」と訊ねて来てくださった方もいて嬉しかった。いろんな人たちが入り乱れる「プチ北九州」になっていきたいです。小倉駅にいらした際はぜひ一度、のぞいてみていただけると嬉しいです!

■嶋田様、本日は貴重なお話をありがとうございました!

【編集後記】

●JR小倉駅前のセントシティ7階にオープンした「ATOMica(アトミカ)北九州」さま。リモートワークが浸透する中、「自宅では集中できない」「インターネット環境や十分な広さがない」という声も多く、レンタルスペースの需要は高まっています。そうした快適な作業スペースの提供に加え、本来のコワーキングスペースは「人と人の協働や協力がベースにある」というお話に興味を引かれた方も多いのではないでしょうか。

●「とにかく人が好き」という嶋田COO。東北大学の在学中に起業したのは靴磨きの会社だったそうで、きっかけは「大学生が採用担当者以外の働く大人と気軽に話せる機会をつくりたかったから」。靴を磨いている間のおしゃべりに価値を見出す発想がユニークですよね。ご本人は仰いませんでしたが、取材後に調べてみると同事業は仙台市等が主催するビジネスグランプリで「学生起業家特別賞」を受賞されていました!

●人と人を「ゆるく」繋ぐATOMica北九州。約束や期日を最初から決めすぎず、気軽に顔をつなぐ感覚がポイント。「居酒屋でバッタリ会った友人に友人を紹介するような…」とのお話から、「状況が落ち着いたら、ぜひ北九州の角打ちへ」と反応する濱村社長。すると「もう地元の方20人くらいに角打ちは行った?と聞かれました。角打ちを経験しないと北九州の単位が取れたとは言えないですね(笑)。状況が落ち着いたらぜひ行きましょう!」

●人と人が出会いにくい時代になったと感じていましたが、嶋田COOのお話を伺いながら、困りごとや誠実な関心、互助の精神を核に新しい関係性はまだまだ広げられるんだと明るい気持ちになりました。嶋田COOお忙しい中ありがとうございました!
 

取材日:令和3年5月28日(金)

■アトミカHPはこちら【外部リンク】