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第45回 地域密着! トップインタビュー/ 株式会社観山 代表取締役社長 川畑 康太郎様 

老舗料亭「観山荘別館」を筆頭に料理屋や洋菓子店など県内で4店舗を展開する株式会社観山。日本庭園を眺める和の空間で美味しい懐石料理を楽しんだことがある方も多いでしょう。終戦後の商店に始まり、畳×イスの和洋スタイル、落語会の催しなど新しい試みを取り入れながら地域で愛され続ける老舗の歩みを川畑康太郎社長に伺いました。


コロナ禍を経て、また靴箱いっぱいに並ぶ
お客さまの靴を見られるのが何より嬉しいです。

■御社の歴史からお聞かせいただけますか。

川畑氏:始まりは祖父が開いた商店でした。祖父は職業軍人でしたが終戦を迎えて職を失い、何かしなければという時に、祖母の家が国立小倉病院(現在の小倉医療センター/小倉南区)の目の前だったんですね。当時の病院は病院食の提供がなく、入院患者の食事は家族が院内の共同台所でおのおの作っていたそうです。そこで祖父は自宅の立地をいかして、病院で料理をする人のための食材販売を始めました。近隣の農家から野菜、唐戸市場から魚介類を仕入れて、家で養鶏して玉子も売って。そんな商店を8年ほど続けていると食材の目利きができるようになり、また当時は出張者向けの宿泊施設が少なかったので料理と宿泊を提供する旅館をやろうと。そうした考えから昭和29年(1954)に割烹旅館「観山荘」(現観山荘本館)を開業しました。

■商店、割烹旅館が原点とは存じ上げませんでした。料亭「観山荘別館」はどのような経緯で創業されたのですか?

川畑氏:別館は父が創業しました。父は長男なので大学卒業後すぐ本館に入り、料理人として働き始めました。祖父が立ち上げた本館は個人経営でしたが、父は法人化への想いが強かったようで、昭和56年(1981)に株式会社観山を設立して独立。翌年に現在の料亭「観山荘別館」をオープンしました。

■2代目のチャレンジであり、振り返ってみると大きな転機ですね。

川畑氏:そうですね。父は大学時代に調理師免許を取ったのですが、実は教員免許も取得していたんです。それで、縁あって当時の青山女子高校(現在の星琳高校/八幡西区)が調理科を設置する際に立ち上げのお手伝いをさせていただいて。すでに料理人として20年近いキャリアがありましたし、教員免許もあったので一時期は教壇にも立っていたんですよ。そんな父が次にチャレンジしたのが福岡市への進出でした。別館と同じく主要駅から少し離れたエリアでゆっくりと食事をお楽しみいただきたい、というコンセプトで平成9年(1997)にオープンしたのが福岡市初店舗の「桜坂観山荘」です。

■川畑社長はその「桜坂観山荘」を立ち上げから任されたとか?

川畑氏:私は高校卒業後、大学浪人を経てアメリカに留学し、卒業し帰国と同時に別館に入社、最初の一年は事務の仕事を覚えながら皿洗いをしました。桜坂観山荘を任されたのは28歳の頃です。その後、弟やスタッフと一緒に和洋の料理をアラカルトで楽しめる日本の料理屋「IMURI(イムリ)」、お持ち帰りとお取り寄せのスイーツ専門店「西洋菓子工房IMURI」を立ち上げました。北九州の観山荘別館を含めて、観山グループとして現在この4店舗を経営しています。

■「観山荘別館」は歓迎会などで弊社も利用させていただいています。旬の食材を使ったお料理はもちろん、日本庭園も素敵ですよね。

ありがとうございます。別館は御社のような企業さまの集まりや団体さまのご利用が多かったのですが、コロナ禍になり大人数の会合や宴会はやはり少なくなりました。反面、以前に増して個人のお客さまにご利用いただけるようになり、今は個人利用と団体利用の割合が半々くらいです。長いコロナ禍を経て、ようやく再び、お客さまのにぎやかな玄関の出入り、靴箱いっぱいに靴が並んでいるのを見ると込み上げてくる想いがあります。

■一般的に料亭と聞くと敷居が高いイメージもありますが、御グループはお値段もお料理の内容も公式ホームページでオープンにされていて大変助かります。

川畑氏:ひと昔前の料亭や小料理屋さんは値段が分からないことも多かったですよね。お会計になって金額だけが書かれた紙をそっと渡される、というような。そういう古いやり方はやめて、何がいくらか分かりやすい明朗会計にしよう。お料理も、食材の入荷状況で変更になる部分があるとしても、なるべくオープンに分かりやすくお伝えしようとホームページを作る時に決めました。

■新しい試みに意欲的ですよね。私が初めて伺った頃は座卓でしたが、途中から畳敷きの和室にイスが配置された和洋スタイルに変わって、斬新で驚いたのを覚えています。

川畑氏:和室にイスとテーブルという組み合わせは桜坂観山荘の立ち上げ時に始めました。26年前はそういうスタイルはまだ珍しかったのですが、好評だったので別館にも取り入れたんです。父曰く「福岡でこの様式を最初に始めたのはうちだ」と言っていましたが、本当かどうかは定かではありません(笑)。でも、いつも新しいことを取り入れる父でした。

■お料理とあわせて落語・演芸を楽しめるイベント「観山寄席」も好評ですよね。もう50回以上開催されているとか?

川畑氏:観山寄席は懐石料理とお飲みもの(飲み放題)、落語がセットになったイベントで年3回催しています。最初は広間の有効活用で始めたんです。大人数の宴会は毎日はありませんし、広間を遊ばせているのももったいない。何か喜ばれるようなイベントはないかと考えて、20年ほど前はまだ落語も九州ではあまり見られませんでしたから珍しいしやってみようかと。プロの噺家さんをお招きしますので話芸はお墨付き、毎回広間がどっと沸いておかげさまで大変好評です。

■弊社のゆうゆう壱番館も実は大変お世話になっているんですよね。観山寄席の噺家さんにお昼の時間帯は壱番館に来ていただいて、落語と観山荘別館のお弁当が楽しめる「ゆうゆう壱番館寄席」として10年近くコラボレーションさせていただいて。壱番館寄席はまだお休み中ですが、コロナの状況が落ち着いたらぜひまたよろしくお願いします。
 川畑社長ご自身についても伺わせてください。川畑社長からご覧になって北九州の魅力はどんなところでしょうか?

川畑氏:私は北九州で生まれて育ち、桜坂観山荘の立ち上げを機に福岡市へ移り住みました。トータルで数えると福岡市で暮らした年月の方が長くなりましたが、今も感情が高ぶると無意識に北九州弁が出るみたいなんです。妻と口喧嘩すると「口が悪い!」と注意されます(笑)。6年前に父が亡くなり仕事でも北九州で過ごす時間が増えたのですが、たしかに客観的に見ると北九州の言葉は荒い(笑)。だけど、本心は違うんですよね。会合などでいろんな方にお会いしますが、皆さん面倒見がよくて情が深く、人間が温かいと感じます。周りを見れば自然が豊かで食材も豊富、北九州空港は24時間利用可能ですし、街全体がずいぶんきれいに便利になりましたよね。だからこそ、そうした良さをもっと活かせるんじゃないかという想いもあります。市外から赴任してきた方と話をすると口をそろえて「北九州は良い、住みやすい」と仰るんです。高校や大学を卒業後、多くの人が市外に出てしまう状況ですが、若い世代の方々も同じように北九州に強い魅力を感じているでしょうし、留まれるようなものがあるといいなと思います。

■プライベートの時間はどのようにお過ごしでしょうか?

川畑氏:以前は年1回の家族旅行以外は休みをほとんど取りませんでした。ですが、コロナ禍を機に今はスタッフがそろう日曜を私の休みにしています。去年の春に末の娘たちが巣立ち、これから夫婦ふたりでどう過ごしていこうかという話から妻もゴルフを始め、最近は夫婦で練習に行くようになりました。ただ、私がつい「もっとこうすれば良いのに」と口を出してしまい、妻が「あれもこれもできん!」とケンカになるので、いらんことを言わないように気をつけています(笑)。
 一人の趣味は篆刻(てんこく)です。石などに印を彫るもので、書やハガキにサインとして押すスタンプのようなものですね。昔から書道が好きなので、自分の書に手作りの篆刻印を押したくて始めたのですが、かれこれ20年くらい続けています。今も月2回、先生に教わりながら書道展や日展に作品を出品しています。

■最後に、座右の銘を教えてください。

川畑氏:大切にしているのは「感謝」という言葉です。難しい言葉ではなくて、感謝という言葉が好きなんです。お客さまに対する感謝、一緒に働いてくれる従業員への感謝、家族への感謝、魚や肉、野菜など自然の恵みへの感謝。ずっと大切にしていきたい言葉です。

■川畑社長さま、本日は貴重なお話をありがとうございました!

取材日:令和5年4月24日(月)

【編集後記】

●北九州市小倉北区にある老舗料亭「観山荘別館」を経営する株式会社観山様。福岡市の料亭「桜坂観山荘」、日本の料理屋「IMURI(イムリ)」、スイーツ専門店「西洋菓子工房IMURI」とあわせて県内で4店舗を展開されています。今回取材に伺った観山荘別館は不動産中央情報センター本社から車で約5分というご近所。実は取材スタッフも弊社入社当時、新入社員歓迎会で伺った思い出のお店です。

●川畑社長は18歳までお祖父様が開業された割烹旅館・観山荘本館で育ったそう。「当時は同じ建物で家族も暮らしていました。昔の本館は玄関を入ってすぐの場所に帳場があって、幼い頃は祖父母と帳場のコタツでよく過ごしていましたよ」

●「料亭として日本文化を大切にしたい」と川畑社長。お宮参りプラン、ご長寿プラン、法要会席プランなど家族行事に利用しやすいプランが様々にあり、例えば還暦のお祝いなら赤い頭巾とちゃんちゃんこの貸し出しや記念写真のサービスなど嬉しい心配りも。インスタグラムで「#観山荘別館」と検索するとご利用になったお客様方の素敵な投稿写真もたくさん見つかります。

●結納や披露宴でのご利用も多い観山荘別館と桜坂観山荘。皆さんは、結納で新郎家と新婦家のどちらが上座に座るかご存知でしょうか。「結納はそもそも新郎側が新婦の家に足を運んで挨拶をする儀式ですから、結納式ではまずは新婦側が上座に座ります。そして式が終わって食事会になると今度は来てもらった感謝の意として新郎家を上座にしておもてなしをするわけです」。最近は結納を省くカップルも増えていますが、こうした意味があるので本来挨拶に伺うべき立場の新郎側から〈結納はしなくていい〉〈簡略化しよう〉と切り出すのは大変な失礼になるのだとか。「私も3人の娘を持つ父ですし、結婚を控えた後輩から〈結納やらいらんですよね?〉と相談された時には〈お前ね、そもそも結納というのは…〉とこんこんと説いて聞かせた覚えがあります(笑)」

●取材中、趣味の篆刻を見せていただき感動していたところ、後日、川畑社長から濱村の名前の篆刻をお送りいただきました。素敵なサプライズプレゼントに感激しました。

●終始気さくにお話しを聞かせてくださった川畑社長。お忙しい中、お時間をつくってくださって本当にありがとうございました!